札幌格安航空券のこんな場合

開店2週間後の営業報告では、来店客の83%が、これまでJを利用したことのない新規客だった。
若い世代から敬遠される傾向があったJだけに、この驚異的な数字に首脳陣たちは驚いたという。そして大半の来店客が、「HとJの商品の違い」、例えばサービスやクオリティーなどを具体的にカウンターで尋ね、比較をしながら購入を決定していた。
デフレが進行する中で″比較購買″に慣れた消費者の行動を真剣にウォッチすることすら、それまでのJにはなかったのだ。「ライバル視されるのは光栄なこと」とH本社経営企画室室長代理に当時の話を聞いたところ、「ライバル視されるのは光栄なこと」という回答が真っ先に返ってきた。
当初、Hは、格安航空券しか扱わないグレーなイメージが強かった。しかし、そこに業界の雄であるJが参入してくれたことで、「われわれは、マーケットにおける一定の役割を果たしたのだという実感が持てた」と語り、「Jが格安航空券市場に参入をしてくれたお蔭で、業界を活気づけていくことができるから…」と余裕を見せる。
ベンチャーの旗手であるHは、「パッケージ商品」全盛の時代に、チケット1枚から商売を始めた会社だが、4半世紀をかけてJに敵対視されるだけの大会社に成長した。「デイリー(M)でないEの商品から、われわれはスタートした。

当時、日本の大手航空会社はどこも相手をしてくれなかったのです。JとHでは、さしずめ超高級乗用車と軽自動車くらいの違いがありました」と創業時のようすを話す。
しかし、「海外旅行を、ここまで消費者の身近なものにさせ、市場の拡大に努めたことにはこの戦いはすでに5年目に突入したが、新宿南口を舞台にした「首都圏決戦」は、不退転の気構えで現在に至っている。自負がある。
新たな需要創造に貢献したつもりだが、そのいちばんのポイントが、やはり″価格″だったのではないか」と語る。しかし、課題は多いという。
「″H″という名前は浸透してきました、特に30代くらいの世代までが、Hの主なマーケットです、ところが、シニア層に対してはまだまだ力不足を感じます、シニア層がHに求めているものは、利便性ではなく、安心感ではないかと考えています」という。海外拠点数や″もしものときの安心感″は、Jの18番なだけに、「業界の風雲児」ともてはやされた時代から、消費者の目も変わってきたことにHは気づいて、それに対応しようとしているようだ。
若い会社だから積極的なIR活動Jが一目置くまでに成長したHは、社員数は約3000名で、平均年齢は28歳という若い会社だ。そのHが今後、もっとも力を入れていきたいことは「社員教育」だという。
学歴・学閥にこだわらない実力主義が徹底している職場だが、給与体系や労働条件によくない噂も流れただけに、教育が重要な課題であることに違いない。Hのスピリットは一言で″上昇志向″です。
他社の上をめざしていくために、われわれができることは何だろうかと考え、それを実行する。基本給は固定だが、業績に連動した給与体系だから、北海道でも東京以上に稼いでいる社員がいます。
応対してくれた室長代理は、話し方も丁寧で説得力があり、有能な社員であることを直感させる。こうした人材を多数中枢に集めているHの潜在力は相当なものといえよう。

Hの連結ベースでの売上高は、約290億円(05年10月末)である。東証一部に上場しているHは、これら事業報告も含め、積極的に「IR活動」(投資家や株主に、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供すること)を行い、一般の投資家や消費者からの信頼を得るように努めているという。
非上場のJにない、このような社会的な信用を得るための活動について暗に牽制しているようにも見える。ちなみに、Jの株式上場については、旅行業界に詳しいT氏によると、「1995年にJR東日本から株式上場するようJは強く要請されましたが、答えは明快で、今後も上場はありえないでしょう」という。
なぜなら、資金を投資家から集める必要がない、店頭公開せずとも知名度は十分ある、うるさい株主の話を聞いてばかりいては、スピードをもった経営改革などできない。今回行われたJのホールディング化やリストラクチャリングも、苦境に立たされていたとはいえ、1200億円という潤沢な資金が、現実に手元にあったからできたとも言える。
今後のことは別として、たしかにJが上場することによるメリットは皆無といっても過言で、福利厚生費の運用とその新しい潮流バブル経済の崩壊で噴出した不良債権問題が引き金となり、大企業を中心に長年保有していた保養施設の売却が相次いだ。軽井沢や那須高原など由緒ある別荘地に、賄いを雇っての施設運営は、人件費や維持費、固定資産税など負担が大きく、頭痛のタネだった。
そうした中で、社員の福利厚生を外部の事業者に委託して、経費の削減を図る企業が増えはじめた。バブル崩壊後に編み出された「福利厚生アウトソーシングサービス」という手法は、12世紀のニュービジネスとして脚光を浴びるようになった。
この事業を目的に、社内ベンチャー制度を利用して設立されたのが「株式会社J」(東京都江東区、資本金3億円)だ。

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